タイトル写真提供 : 斉藤 高根氏

棒アナゴの正体は?

 棒アナゴと聞いたら、だれだってアナゴの仲間と思いますよね。でも、それはまちがいです。たしかに、形はアナゴに似ているかもしれませんが、アナゴの種類ではなく、ましてや魚でもないのです。

 棒アナゴの正体は、標準和名クロメクラウナギという海の生物。水深 50 〜400メートルの深海に生息し、脊椎がなく、脊索と呼ばれる脊髄みたいなものがあるだけ。体型は細長く、全長 50 センチあまり。目は退化し、口は穴状で縁にひげがあります。魚を証明するエラはなく、その代わりとして6対の小さな穴を腹部に持っています。尾びれ意外にはひれがありません。

 このへんてこな生き物が、秋田県男鹿地方では棒アナゴ、秋田県南部では焼きアナゴと呼ばれて食用にされています。所変われば、食べ物も変わるものです。

 ぼくが棒アナゴに始めて出合ったのは、男鹿半島の居酒屋でした。ちびりちびりとやっていると、「棒アナゴ」という見なれぬ品書きが目にはいってきました。店主にどんな魚かと説明を求めると、曖昧模糊とした答え。正体不明の食べ物があれば、注文してみるのがぼくの信条(そんなたいそうなことではないけれど)。しばらくして目の前に現れたのは、ソーセージみたいな長さ4センチ、直径2センチ前後の円筒形。そこからは姿を想像できず、においも味も歯ごたえも、初めてのものでした。以来、棒アナゴに興味が募るばかりで、取材の機会を狙っていました。

 

 


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取材:野村祐三