旬の魚をもっと知る
アンコウ食ばなし

食材としてのアンコウ
 アンコウは標準和名はキアンコウで、地方名でクツアンコウとも呼ばれております。関東では珍重されている魚ですが、関西ではあまり食べられていない魚です。分布は北海道以南の日本列島各地、朝鮮半島南部、中国大陸沿岸で漁獲されますので、輸入品もあって手に入りやすくなりました。水温に合わせて回遊もすると言われております。旬は冬で、形、大きさからは深海魚の王者の風格がありますが、魚体の無骨さからお相撲さんの体形を‘アンコ型’と呼ばれたり、餌の取り方も加わって‘働きもせずに待ち食いをする’とよい表現には使われません。食べる餌も海藻、小魚からサメ、海鳥も腹から出てきた記録があります。味は肉質には脂肪が殆どなく、蛋白質は豊富ですがさっぱり味で、コラーゲンが多いので口当たりがよく、くせの少ない魚です。栄養価値も亜鉛、銅が豊富で、肝にはずば抜けたビタミンA含量、ビタミンD、Eも含まれております。
 体表面にぬめりがある事と特殊な体構造の為、一般的な卸し方が出来ず、‘吊るし切り’という卸し方で、下顎の周囲の固い骨に鈎を刺して吊るします。内臓も丸ごと食べられ、しかも美味しいので‘七つ道具’と言われて珍重されております。七つ道具とはキモ(肝)、トモ(尾鰭)、エラ(鰓)、ミズブクロ(胃)、ヌノ又はチリメン(卵巣)、ヤナギニク(頬肉)、カワ(皮)です。料理法は先ず、肉は霜降り作りにして刺身でも食べられます。和え物、酢の物にも致しますが、これらに必須の‘とも酢’があります。これは肝に強塩をして20分位おき、酒をかけて20分蒸し、これをすり鉢で摺って焼き味噌を加え、酢で延ばし、好みに甘味を加えて作ります。こくがあって旨味は最高で、鍋料理にも使われます。この蒸し肝を‘アン肝蒸し’と言ってとも酢で食べたり、ポン酢で食べたり致します。
 代表料理は‘アンコウ鍋’です。西のフグ鍋、東のアンコウ鍋と言われ、色々な野菜類と一緒に煮込んで食べますが、味付けが二種類あります。しょうゆ味仕立てと味噌味仕立てです。しょうゆ味仕立ては東京が主で、みりんも入って甘めに仕上げ、蒸し肝を加えます。味噌味仕立ては水戸の名物で、生の肝を鍋に入れて空煎りをし、肝を溶かして脂肪を出し、味噌を加えてだし、具を加えて煮あげます。体の芯から暖まる料理の絶品です。




旬と産地

産卵時期!→5〜7月(仙台湾)、6〜7月(北海道)
分布
 ・(キアンコウ)北海道以南の日本沿岸および朝鮮半島沿岸
 ・(本種と近縁のアンコウ)オホーツク海と太平洋岸

水揚げベスト4
  (1992年度/太平洋北区沖合底引き網漁場別漁獲統計資料より)
  (1)茨城県 126.3トン
  (2)宮城県  76.7トン
  (3)北海道  24.8トン
  (4)千葉県  17.6トン
  

 




栄養〜アンコウに多く含まれる栄養と効能〜
栄養素
蛋白質(コラーゲン)
亜鉛、銅
ビタミンA含量、ビタミンD、E

〜これに効く!〜
美肌効果。
糖代謝、成長、味覚に必須のミネラル。
目の健康、風邪の予防。



おいしいアンコウの見分け方
切り身でパックしてある場合は水があまり出ていないものを選びましょう。



アンコウの漁法
底引き網
底刺網
釣り




全漁連料理教室講師
このページは、全漁連料理教室講師の田口道子先生が旬の魚を使った調理法・料理をご紹介します。