漁獲量激減が叫ばれているマイワシについて、水産庁は2003年3月資源量の変動と海洋環境との関係の分析結果をまとめた。
 これによるとマイワシ資源量の変化は、海流や捕食生物など複雑な生態系要因が絡んでいるが、現在は、長い周期の気候変動の影響も強く受けている低水準期で、当面は漁獲量の回復が見込みにくい状況にあると結論づけている。更に国民的に関心が高まっていることを受けて「マイワシの謎」としてホームページでも詳細な情報を掲載始めた。(http://abchan.job.affrc.go.jp
 マイワシ(太平洋系群)は2〜3月ごろに太平洋南部の沿岸で親魚が産卵し、卵は黒潮にのり房総沖まで北上しながら稚魚に成長。その後北上して三陸沖の遠洋で成魚になり、さらに南下してきて房総沖などで漁獲される。ところが同庁の分析によると、1991年以降は産卵量が激減しており、稚魚の分布も1996年から急激に減り続けている。
マイワシの資源量は、漁場に入ってくる幼魚の量に大きく左右され、幼魚量は大きく二つの要因で変動する。カツオやマグロ、サメといった大型海洋生物による捕食の影響と、人為的な漁獲の影響だが分析は「捕食の影響は極めて小さい」。乱獲対策として水産庁は1997年以降、日本全体で一年間に捕ることができる量を決めた「漁獲可能量(TAC)」を毎年設定
しているが、漁獲量は思うように回復していない。「漁獲量はいつ回復するのか」。漁業関係者らの関心もこの点に集まっているが、今回の分析で水産庁は新たに「長期周期の気候変動が大きな要因の一つ」と指摘。冬場にアラスカのアリューシャン列島付近から太平洋沖に張り出す低気圧の活動が弱まっている影響で、餌となるプランクトンなどを運ぶ海流が弱まり、マイワシの生育が阻害されているという。この低気圧は太陽の黒点変化などの影響を受けるとの説もあり、その強弱は30〜50年周期で変化するとみられ、「低水準の生育環境は当面続く見通し」(漁場資源課)と結論付けた。
マイワシの漁獲量は現在4〜5万トン(程度資源量でも27万トンと推定される)。1998年代後半から減り始め、ピークだった1988年に比べ約百分の一の水準だ。
スーパーなどの店頭価格も十年前は一匹50〜70円だったが、現在は同120〜250円と
大幅に上昇、かつての大衆魚はすっかり高級魚?になっている。