香川県の魚類養殖の取り組み

香川県の魚類養殖業者は、持続的養殖生産確保法や香川県の養殖指導指針に沿って香川県漁業協同組合連合会と香川県海水魚類養殖漁業協同組合を中心として養殖業者が今後持続的に豊かな漁場で養殖が行え、消費者の方々に安全で高品質のハマチやカンパチ、タイなどを食べて頂くために、漁場環境の保全や安全でより品質の高いさかな作りに向けて日々努力しております。

その具体的取組みとして、
@漁場環境の保全、
A安全で効率的な生産、
B新鮮に届けるための流通について各種の取り組みを実施しております。
漁場環境の保全で継続的な養殖と健康な魚を
おいしい魚は、まず魚が健康であることが最も大切であり、そのためにはよい漁場環境を維持しなくてはなりません。

(1)漁場環境に配慮して、過密養殖を避けるために、漁場の深さや大きさなどに応じて養殖小割の大きさなどを決めたり、いけすの中に入れる魚の尾数を適正に管理することも重要となります。
特に、香川県の海域は、冬場に8℃まで下がるため、養殖しているハマチやカンパチ等は生きることができません。
そのため、冬場には養殖漁場から養殖魚だけでなく養殖小割もなくなり、季節風によって海がかき混ぜられることにより自然の力で漁場の環境が維持されるとともに、漁業者が海底をかき混ぜたり、底質改良剤(石灰・貝化石等)を散布するなど積極的に漁場環境を良好に維持するよう努力しています。
しかしならが、香川県も含めて瀬戸内海沿岸は、高度成長期以降では沿岸の工業地帯や都市からの工業排水や生活廃水により水質の富栄養化が進み、夏の高水温期には赤潮の発生が見られるようになっていました。赤潮になるプランクトンの中には、はまち等の魚をへい死させるものもあり、過去には大きな被害を出しています。
しかし、瀬戸内海の環境を守るため、昭和48年の瀬戸内海環境保全臨時措置法等による海域に排出される窒素や燐などの総量規制など各種の取り組みが行われており、水質は徐々に回復してきています。
その瀬戸内海を生活の場としている養殖業者は、毎日、漁場の水温や溶存酸素等の環境やプランクトンの発生状況を確認しながら養殖を行っています。
 

(2)養殖魚に与える餌についても従来の生のいわしやさば等の餌から、より食べ残しの少ない生の魚と配合飼料等を混ぜて粒状にした練り餌であるモイストペレットなど変えたり、一部地域では養殖魚への餌のやり方についても一定の期間週に2日だけ与えるなどの取り組みを行っています。
また、漁業地域では海を守るために、漁協婦人部などが中心となって、石鹸を使用する運動を進めています。
香川県の養殖業者は、このような漁場環境をまもるための取り組み行うとともに、その結果どのような環境になっているか確認するために、主な養殖漁場の水質や底質などを年2回定期的に検査し、漁場環境の変化を監視しています。
より安全で品質の高い魚をつくるためには(生産技術の向上)
消費者の皆さんにより安全で、おいしい養殖魚を届けるためには、まず魚を育てるときから養殖方法や餌などについて工夫をしながら養殖をしています。
(1)餌について、かつて養殖はまちの餌としてマイワシ等の生餌をハマチが飽食するまで与えていたことがあり、脂肪の過剰摂取によるハマチの「脂臭さ」が指摘されてきていました。しかし、平成6年ごろ以降はモイストペレットやドライペレットの使用が主流になるとともに、成分や品質が管理されるようになり、年間を通じて魚の成長に必要な栄養組成の餌が与えられるようになっています。
例えば、モイストペレットとは、イワシ・サバなどの生餌に魚粉、魚油、各種必須ビタミン類などを添加して機械で混ぜて粒状にしたものですが、その配合量を調整することにより、脂質が過剰にならないように配慮されています。
例えば、モイストペレットとは、イワシ・サバなどの生餌に魚粉、魚油、各種必須ビタミン類などを添加して機械で混ぜて粒状にしたものですが、その配合量を調整することにより、脂質が過剰にならないように配慮されています。
香川県海水魚類養殖漁業協同組合では、適度に脂ののった魚を育てるため、イワシ等の生の餌と配合飼料等の配合割合の目安を示して一定以上の品質になるように取り組んでいます。
 
次に、水産用医薬品の取扱について、生産者は「育てる魚が健康であること」を目指していろいろな取り組みを行っていますが、万一病気になったら適当な薬を与えて健康に戻してやることが必要です。
 養殖魚は「くすりづけ」であるとの先入観が消費者の多くに対して植え付けられてしまっており、現在でも安全性の懸念を抱いている消費者が多いようであります。
そこで、香川県の独自の取り組みとして、投薬して体内から医薬品が完全に消失するまでの時間を元に法律で定められた休薬期間を完了することはもちろん、その休薬期間をさらに3日から5日間延長するよう定めた香川県独自のガイドラインをつくり「安全で健康なさかなづくり」の飼育管理を徹底しています。さらに、出荷した魚についても無作為で抽出して薬が体内に残っていないかのモニタリング調査を昭和63年度から継続して実施しています。
魚類養殖は、基本的には農産物と違って消費者から全く見えない海上ですべての作業が行われているため、消費者が魚の養殖方法をもともと十分理解していないこともあり、心理的不安が存在しているのではないかと思われます。
心理的不安は、いくら言葉で説明しても完全に取り払うことは困難でありますが、この不安を払拭するためには、どのような方法で作られた魚であるかを消費者に明らかにすることが不可欠であると思われます。
そのため、香川県の養殖業者は、消費者に香川県の養殖魚は、どのような餌を与えているのか、また、どのように出荷しているのかを実際に体験してもらい、養殖業者と対話ができる養殖体験会を開催しています。
 
消費者へ届ける方法
消費者の方により品質の優れた新鮮な養殖魚を届けるために、産地から消費地近郊まで流通の現場では色々な取り組みを行ない、多くの努力や工夫がなされています。
(1)近年、活魚輸送のために流通網が整備されてきたことにより、一層鮮度の良い魚が迅速に消費者に届けられるようになってきました。
まず、産地では、水揚したり、活魚で出荷する場合のいずれも、その数日前から餌止めすると鮮度保持効果の高いことが知られています。飽食した魚は筋肉中にグリコーゲンを多く蓄積し、死後これが乳酸に変化して筋肉が酸性化するために蛋白質が変性を起こし、肉質に悪影響を及ぼします。餌止めによってこうした現象を防ぎ、また活魚の場合は輸送中の排泄物による水槽の汚れも防止できます。餌止めは、余分な脂肪分を除き、身を引き締める効果もあります。
(2)次に産地から消費地への輸送について、より新鮮でイキのいいハマチを食べて頂くために、「生きてるハマチ直送便システム」を実施しています。
 香川県漁連にあっては、東京や大阪に安定的に高鮮度の養殖魚を供給するために、神奈川県久里浜や兵庫県神戸市に一時ストックができる出荷基地を設置し、専門の活魚船約15隻の船を運航させ、産地と出荷基地や出荷基地と市場との間を運航させ香川県育ちのハマチなどを生きたまま運んでいます。
そして、市場や出荷基地でより鮮度維持ができ、おいしい魚を供給できる活〆をしてから、小売店やスーパーなどの量販店へ届けています。
 
そして、市場や出荷基地でより鮮度維持ができ、おいしい魚を供給できる活〆をしてから、小売店やスーパーなどの量販店へ届けています。
 

3)また、香川県海水魚類養殖漁業協同組合では、マダイについてはより天然に近い綺麗な色の魚を出荷するため、出荷前に色を測る機械で測定して一定の基準以上でなけれは出荷しないこととなっています。

 
(4)このようにして、店頭に並んだ養殖魚については、香川県で養殖された魚であることのシールを量販店との協力のもと、試験的にパックなどの商品に添付するなどしてPRを行なっています。
 
知ってもらおう香川の養殖(養殖体験会)
香川県ではこのような各種の取り組みを知ってもらうために、香川県海水魚類養殖漁業協同組合では、消費者に養殖現場でどのような餌を与えているか、どのようにして出荷しているかなどの各種作業を体験し てもらい、養殖業者が何を考えて魚を作っているのか、養殖の現状や取り組みを理解してもらうため、消費者や流通業者を対象とした養殖体験会を開催しています。
 

     


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