ホヤの汁が隠し味
     民宿「松波荘」で、夫の孝義さんが育てたホヤを素材に、妻の優子さんが料理の腕前を披露してくれました。「ホヤといえば酢の物が定番ですけど、産地では刺身で食べることが多いんですよ」。
 その刺身を土佐酢をタレにして味わうと、獲り立てだからでしょう、なんともいえぬ芳香が鼻先を突き抜け、かすかな渋みと天然の甘味が、口中にじわーっと広がってきました。ホヤ好き人間の至福の一瞬です。
  続いて酢の物をつまみにして、冷たいビールをゴクリ。この取り合わせを楽しむと、いつも人類が雑食性であることに感謝せずにはいられません。
「酢の物には産地ならではの隠し味を使うんですよ。殻の中にあるホヤの汁を酢に少量加えるんです。ホヤ独特の香りが高くなり、ホヤ好きの人はこれでないと食べた気がしないと言いますね。でも、新鮮なホヤの汁にかぎりますよ」
 ホヤのてんぷらは珍しく。ぼくもこの日の「松波荘」で初めて食べました。ほのぼのとした香りと繊維質の噛み具合、成熟した味を堪能し、ホヤが油にも合うことを知って一人ほくそえんだのでした。
 このほか、ホヤ料理には、ゆでホヤやかき揚げ、キムチ和えなど色とりどり。なかでも、炊き込みご飯がぼくの大好物。ホヤの身とささがきゴボウを醤油味でご飯に炊き込むだけ。産地でもめったにお目にかかれないので、あなたがホヤ好きならばぜひ自分で作ってみてください。鮮度のよいホヤを使うのが、この料理の唯一のコツです。
漁師流のホヤ  
@入水孔と出水孔のある外皮の上部を切り取る A縦に包丁を入れて、外皮の表裏をひっくり返して身を取り出す B腸を包丁の刃先で切り、糞を取り除く。これを水洗いして、下おろしは終了。おろし方続き

 


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魚でもなく、貝でもない
荒波でもまれるから美味
生後4年目に漁獲
ホヤの汁が隠し味
ホヤ料理

ホヤの刺身。土佐酢のタレでどうぞ