「おれは秋エビのオスが好きだね」
 
午後になると、打瀬網船が次々に帰港してきた

 腹にはらむ卵が人気で、
漁協職員の手で計量される
生簀に生かされてセリを待つ
ホッカイエビはオスよりもメスが珍重されます。この日のセリでも、 オスが1キロ2000円に対して、メスは2700円と大きく差をつけていました。ところが、当の山口さんはオスのほうが好みだと言います。
「漁をしていて腹が空くと、エビをよく食べるよ。身を味わうには、メスの卵はじゃまっくさいね。それに、おれは夏 のエビよりも、身がコリコリしている秋のオスが好きなんだよ」
 山口さんがぼくたちの小船に数尾のホッカイエビを放り投げてくれました。それを教えられた通りに下ごしらえ(?)。ひねりながら頭をもぎ、ハラワタを一緒に取り除きます。次に胴の殻をむき、口に含んで、尾の殻から身をしぼり出します。こうすると一度にムダなく身を食べることができます。
 ぷりっとした身が舌の上で転がり、それから嫌みのない甘味が、ほどよい天然の塩味とともに口中に広がってきました。やや遅れて、ゆっくりと旨味が舌にまつわりついてくるのでした。


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CONTENT
通り名はホッカイシマエビ
帆船は藻場を守るため
「おれは秋エビのオスが好きだね」
頭は味噌汁の出汁に絶品