熊本県・あまくさ漁協
   
本渡市漁港

 熊本港から乗船した高速船『マリンビュー』号はその名の通り客室前方が広くガラス張りになっていて、進行方向の海の風景がワイドで見渡せる心地よい船だった。右手に雲仙普賢岳(長崎県)、左手に熊本本土から“天草五橋”でつながる天草上島を見ながら約1時間で天草下島の玄関・本渡港に到着した。天草と聞いてまず思い当たるのが“天草四郎時貞”だろう。 1637 年、キリシタン弾圧と苛酷な年貢取り立て・飢餓に耐えかねた農民一揆「天草・島原の乱」で総大将として戦った 16 歳の少年だ。その舞台となった天草側の激戦跡などが残っているのが下島で、今でも4〜5千人のキリシタンが住んでいるという歴史的関心の高い所でもある。闘いで天草の人口は1万5千人(2万5千人だった)に激減、その後は幕府直轄の“天領地”となり外から人を入れて島の復興が行われた。「あまくさ漁協」はそんな下島の1市5町が平成 15 年4月に合併した新生漁協で、本所は天草諸島(大小 120 島)のほぼ中央に位置する本渡市に置かれている。



各支所の特長を聞いた
 
森口哲雄参事

 本渡市には本所のほか本渡市統括支所、本渡地方卸売市場がある。まず国道沿いにある本所を訪ねると森口哲雄参事が各支所の特色などについて説明してくれた。

 本渡支所は北に有明海、南に不知火海があり支所の中で唯一『地方卸売市場』を持つ。3d級の漁船を主体に刺し網・釣り漁などが行われているほか、5業者がタイやブリの養殖もしている。

 本渡市の北にあり有明海の出入口に面する五和町支所は所属漁船が最も多く、一本釣りやウニ・サザエ・海藻類の採介漁業に加えアワビの養殖も行われている。

 本渡市の南、不知火海に面するのが新和町支所。ここに水揚げされるタコは「脂の乗りがよくて旨い」と引っぱりダコだそうだ。良質な天然のカキやアオサも水揚げされる。

まだ動いている伊勢エビ

 島の西側、東シナ海に面するのが苓北町支所と天草町支所。苓北町支所に水揚げされる荒海にもまれ身が締まった一本釣りの“天領アジ”は、「大分の関サバより高値が付く時もある」。大型のクルマエビ・イセエビも揚がる。天草町支所にもブランド化された一本釣りの“天草アジ”がある。 13 隻の底曳き網漁船からはエソ・タイ・イトヨリ・イボダイなどが水揚げされる。 また、大小20ヶ統の定置網では、ブリ・サワラ・アジなど高級魚が獲れ、伊勢エビも水揚げされる。

 天草町の南、河浦町支所では底引き網漁のほか、深い入り江の羊角湾でブリ・カンパチなど魚類に加えヒオウギ貝や真珠貝の養殖も行われている。

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