鹿児島県・与論町漁協
   
茶花空港に隣接するウドノスビーチ

 鹿児島から沖縄までの海域約 600km にはたくさんの有人・無人島があるが、その 1 番南の島で沖縄から北に 28km 地点にあるのが与論島だ。飛行機だと鹿児島から約 2 時間、沖縄から 45 分でどちらも小型のプロペラ機が運航している。“東洋の真珠”と称されるきれいな島―と聞いていたが、機上から見た環礁の中に浮かぶ島はドキッとするほど美しくて可愛かった。周囲 24km 弱、面積 21 kuで山岳や河川のない平坦な地形で平均気温は 23 ℃とまさに楽園のような島だが、琉球王朝の統治下にあった時代、薩摩の直属となり奴隷的植民地政策に耐えた時代、大戦後は米国軍政下に置かれ祖国復興が8年遅れる…など島の歴史には厳しいものがあったようだ。島の西側にある空港からサトウキビ畑の間の道を抜けて行くと茶花(ちゃばな)港に出る。港の中央部が島一番の繁華街で茶花漁港・与論町漁協もその外れにある。



漁協の主力はソデイカ
 

 

池田勝組合長
漁協の事務棟・加工場

漁港も環礁の中にあるわけで、まず漁船が停泊している岸壁に出てみたがとにかく海の色が違う。ガイドブックなどには「エメラルドグリーン」と表現されているが、「やさしい水色」…といった感じで心が和む。漁船から降りてきた男性を見つけたので近づいて聞いてみると、ソデイカ漁をしている『謙丸』の福永謙一さんで「昨日は 30 本揚げた」と言う。そこにちょうど池田勝組合長が現れたので事務所に案内してもらい話を聞いた。

 岸壁に沿って荷捌き場と市場、製氷施設と冷蔵庫などがあり、事務棟・加工場は島のメイン道路に面している。事務所内の大部分が漁具関係など販売用商品や加工品の売り場になっていてスペースの無駄はない。「今年( 2005 年)は漁協の 50 周年になります。ソデイカの水揚げ金額は 4 割を占める主力で助かっています」と組合長。

 与論島でソデイカ漁が始まったのは 1992 年で、「それまでもシビ(小さいキハダ)などの瀬物を獲っている時に大きいイカが追いかけてくるのが見えてはいたが獲り方もわからなかった」が、その後、糸満(沖縄)の漁師が開発した“旗流し”漁法で獲るようになった。ソデイカは水深 400 〜 500m に生息する。 11 月から 6 月末までが漁期で大東島沖合まで行くそうだ。「1〜2月は南東方向の遠い場所になるが身が厚くて味がいい。4〜6月は1時間位の所で漁場が近くなる。5〜6月に産卵してその後死ぬ。だいたい1年から1年半の命と言われている」と。ソデイカの産卵場所は八重山諸島のはるか南方海域と言われ、島根県から新潟にかけての日本海でも漁獲されているが漁期はずれている。魚体は 1 本 10 〜 20 sあり、身の厚さは4〜6 cm もある。相場は` 900 円前後でほとんどが糸満の加工業者や鹿児島の市場に出荷されている。

 「水揚げしたソデイカは− 25 ℃で冷凍し3〜4日冷蔵庫でねかした方がいい。身が軟らかくなり甘みも出る」そうで活けや鮮度が重要視される一般鮮魚とはちょっと違う。しかし、ほとんどが刺身用に、特に回転寿司などのイカ商材として重宝されているという。船上で“ロケット状態”(背中を切って内臓・頭・足をとった状態)にし、断熱材を使用した『保冷コンテナ』に入れフェリーで島外に運ばれる。

ソデイカ漁の漁船 水揚げされたソデイカ 出荷用のコンテナが並ぶ
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