昼イカ漁へ

 全国のスルメイカ漁は、多くが夜に行われます。集魚灯を灯し、明かりに集まるイカの習性を利用して釣るのです。ところが西伊豆から南伊豆にかけては、珍しくも日中にスルメイカを狙います。昼イカ漁が可能なのは、よほどスルメイカが多いからにちがいありません。また昼に漁獲すれば、翌朝には東京の魚市場へ新鮮なスルメイカを運搬できるという利点もあります。そのため、ここら一帯では昭和40年代からスルメイカの夜釣りを禁止しているのです。

 子浦の昼イカ漁を取材しました。午前4時、小久保さんの永福丸4・9トンは、ほかのイカ釣船15隻とともに子浦港を出発。「昨日は100キロも釣れたけど、今日は台風の影響があるからどうかなあ」と船に乗って30年というベテラン漁師。永福丸はたてに横に揺れながら、白波立つ駿河湾口を南へ進みました。

疑似餌20本前後が
巻かれた自動イカ釣り機
オモリを持って
仕掛けを投入

 およそ1時間で漁場に到着。20〜30隻のイカ釣船が、すでに道具を下ろしていました。小久保さんは魚群探知機で群れを確認すると、帆を高く張りポイントの上に船を止めました。魚群探知機を凝視し、「今日の群れは水深約200メートルだな」とつぶやくと、オモリを持って仕掛けを投入。 

釣糸を持った指先に
神経を集中
「食ったよ」と釣糸を
巻き上げる

仕掛けはイカ角と呼ばれるプラスティック製の疑似餌を20本前後結び、先端にオモリを結んだもの。これを自動イカ釣り機に巻き、滑車を通して海中へ下ろします。「ここらでは1隻の漁船に自動イカ釣り機を4台以内と決められているだよね。うちは船が小さいから3台を装着している」。

 1台のイカ釣り機の横に陣取り、釣糸を持って全神経を指先に集中していた小久保さんが、「食ってるよ」とにっこり。釣糸を巻いていくと、突如スルメイカがイカ釣り機のドラムの上をすべるように姿を見せ、ぽとんと大きな音を立てて船上に。手で取り込むことなく、勝手に(?)飛び込んでくるのですから、自動イカ釣り機の効果絶大です。

釣れたスルメイカは自動的に船上へ投げ飛ばされる スルメイカをキャッチ 船上に降ってきた(?)スルメイカ

 船上のスルメイカはきゅっきゅっと鳴き、ピュッと墨を吐きます。見ている間に茶色が白色になり、青くなり再び茶色にと体色がめまぐるしく変化します。スルメイカの食いが荒くなると、小久保さんは一人で3台のイカ釣り機の道具を上げたり下げたり。また、船上のあちこちにに散らばっているスルメイカを容器へ放り投げたりで大忙しでした。

「これが石廊崎沖のイカ」と小久保さん 釣れたばかりのスルメイカは半透明 見ていると次々に色が変わっていく



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