沖干し作り

 食いが一段落したところで、小久保さんが包丁とまな板を取りだして「沖干しを作るよ」。その一言を聞いて、ぼくはついゴクリと喉を鳴らしてしまいましたね。かねてから沖干しと呼ばれる、漁師が作るスルメイカの生干しのおいしさを耳にしていたからです。

 逆さ包丁で生きているスルメイカの胴を縦に切り裂きます。内蔵を取り除いてバケツの中の海水でよく洗います。両耳に竹串を通し、船上に結わえたロープに1杯ずつ吊していきます。これで沖干し作りは完了。あとは干し上がるのを待つだけです。

沖干し@逆さ包丁で胴を切り割く 沖干しA内蔵を取り除く 沖干しBバケツの海水で洗う
沖干しC船上のロープに吊す 沖干しD沖で干すから沖干し 沖干しE港に帰る頃には干し上がっている

「沖干しは沖の漁船で干すんだから、漁師でなければ作れないんだよね。これを食べたら、ほかのイカの生干しなんて食べられないとよくいわれるよ。おいしさの理由の一つは、ほかの生干しと違ってのさないことだね。だから身が厚くて、食感もいいし味もいい。海水で洗うのも、味をよくするのだと思うよ。生きているのを船上で作るから、ああやって赤いままに干し上がるのも沖干しの特徴だな」

 十数枚の沖干しが、沖の潮風でゆらゆらとゆられ、これならいい按配に干し上がるはず。海上には蝿もいないから清潔でもあります。沖干しは1日仕上げの半乾き。今船上に干してあるのを晩にごちそうすると聞いて、ぼくはついニンマリしてしまいました。

正真正銘の沖干し(焼く前) あぶる程度がうまい


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