旬のお魚クッキング

〜マダイ〜

 桜の季節とともに春がやってきました! 今回は春が旬の魚、マダイの料理です。
タイといって思い浮かべるのは、やっぱり体が赤やピンクで立派なカタチのマダイ。1年中いつでもスーパーで買うことができますが、“春が旬”ということをご存知でしたか?

 マダイは普段、深海で生活をしている魚ですが、春に産卵のために浅瀬に上がってきます。産卵期のマダイの体の色は桜色であることから、また、その時期は桜の季節と同じことから、『桜ダイ』とも呼ばれています。そして産卵前の栄養のついた身は一年の中で特においしいといわれています。

 深海魚のため、肉質は血液がほとんどない白身で、肉と血液の部分とをはっきり見極めができます。脂肪分は内臓に集中し、海深いところの水圧を受けているために骨がしっかりしているため、良質のゼラチン質が豊富に含まれています。低カロリーで脂肪分も少ないため、ダイエットや成人病予防にもオススメです。身はしっかりとウロコで覆われているため肉質はやわらかく、鮮度も長持ち。『腐っても鯛』という言葉は、“内臓は腐っても肉質は食べられる”という意味です。
 マダイはほどんどの料理法に使用でき、タイ風という異名も使われるほどです。今回は、生食、汁物、焼き物、姿料理から毎日の食卓にすぐに役立つ料理をピックアップしてご紹介しましょう。

 まずは生食の刺身の盛り合わせから―。そのまま「お刺身」として食べてもおいしいですが、平作りは「中華風」や「茶漬け」に、松皮作りはイタリア料理の「カルパッチョ風」に作りかえると、バリエーションも広がって新しいおいしさ発見!

 汁物は、頭(かしら)やアラでスープをとったら、塩味で仕上げて「潮(うしお)汁」にしてもいいですし、トマト味の「ブイヤベース」にしてもおいしいですね。わが家では潮汁に豆腐や野菜を温めながらポン酢で食べる「鯛ちり」を楽しんでいます!

 焼き物は、ムニエルか塩焼きで。ムニエルは最後の仕上げのソースに変化をつけると別の料理に変身しますよ。「ニンニク風味のビルバオ風」、「ドレッシング仕立てのポワレ」、「オレンジソース」、「ジンジャーソース」、「香草ソース」、「クリームソース」なら手間いらずでカンタン。もうひとがんばりできる人は、薬味入りの「マヨネーズソース」をかけて再度焼き上げてもオススメ!又、すりおろしたとろろいもをかけて蒸した「大和蒸し」、かぶをかけて蒸した「かぶら蒸し」はさっぱりと食べられ、高齢者にも喜ばれます。

 姿料理としては、塩焼きにした鯛をそのまま炊き込んだ「鯛めし」、一尾ごと煮てその煮汁で食べる一風かわったそうめん「鯛めん」などがあります。塩焼きをするなら、塩を敷き詰めた焙烙(ほうろく)鍋か土鍋にきのこ類や栗、魚介と一緒に焼いた「塩がま」にしたら、見た目も豪華でおもてなし料理にもいいですね。適当な鍋がない時は、グラタン皿などの耐熱容器か天板を使うと良いです。
 マダイはその風格、彩りが古くから日本人に好まれ、祝い事や縁起物に使用されてきました。婚礼の席での「一升一鯛(イッショウイッタイ)」や「めで鯛(タイ)」など、タイにかけた言葉は多く残され、日本の各地でも婚礼などの慶事にマダイを使った料理が作られます。その代表的なものとして頭つきの背開きに塩をし、煎り卯の花を詰めて蒸しあげた石川県の郷土料理「から蒸し」や高知県の「蒸しずし」があります。

今が一番おいしいマダイ、色々な料理法でかぎりない魅力を味わってみてください!


全漁連料理教室講師 田口道子先生
このページは、全漁連料理教室講師の田口道子先生が旬の魚を使った料理をご紹介します。